衣谷の日記

フランス在住働くシングルマザー

マニピュレーター理論に対する疑問

 フランスで、「マニピュレーター」とか「背徳的自己愛性人格障害者」とかいう概念の専門家と言われているような人たちの本や、それに対処するためのハウツー本をいくつか読んだ。ただ、どこか偏っているような印象はある。それらの言葉が、一種の流行言葉とされているということからも、それに完全に頼ることには、危険があると感じる。事実、マニピュレーター的なところって、誰にでもあるような気がするし、それが常時病的なまでになっている人というのは、本当はごくわずかなのではないかと思う。

 

 フランスでそういったテーマを扱う人たちは、精神科医でも、心理学者でもないことが多い。精神科医か心理学者の資格を持っている人を、私は一人しか知らない。

 それはフランスだけの事情かもしれない。この前読んだアメリカのジョージ・サイモンは、心理学者らしく、アメリカは人格障害の研究もたくさんあるようだから、少し事情が違うかもしれない。

 

 その人たちがお金儲けのために受けのいいテーマで本を出したり、対処法をコーチングする有料講習会や個人カウンセリングをしているのではないか、と思う。弁護士で、マニピュレーターの犠牲者を弁護することを中心に活動している人もいるらしい。ただ、その理論が判決の現場でまかり通るという話は、聞いたことがない。

 

 もちろん、お金儲けだけでなくて、その人たちも、ちゃんと人を救おうと誠心誠意やっている部分もあるには違いないと思う。特に、マニピュレーター的な人を相手にするとき、行動療法的なもの、相手に対する態度のコーチングが、効果的であろうことは想像がつく。私が、ついついしたてに出る癖を直し、はっきりと物事を問いただすようになることは、相手との関係を変えるのに、とても役に立つように。

 精神科の主な手法のように、生育歴から起こる問題を分析したりするより、そのほうが直接的で有用かもしれない。だから、私がマニピュレーターについて学んだことは、無駄ではないと思う。

 ただ、そのやり方は、相手を治すことを目的にしていない。マニピュレ-ターは治らない、という大前提がある。

 

 元夫が精神科医との治療を行って、父親としてよい態度を取ることができるようになるということが、あるんだろうか?またこのスタート地点に戻ってくる。

 100%悪い、救いようのない人っているんだろうか?