衣谷の日記

フランス在住働くシングルマザー

でもお父さんがぼくたちを殺したら?

 オリオルは先週3度、私にその言葉を言った。「お父さんがぼくたちを殺したら?」

 「殺しはしないでしょう?叩くことだってできないよ。お父さんはそれが不法で、それをしたらあんたたちの親権を失うことを知っているんだから。」

 

 今こう書きながら、あの父親は、子どもたちを愛しているから親権を失いたくないのではないと思う。あの父親は、自分が「権力をふるい、いじめる対象」として「玩具」として、子どもたちを持っていたいのだ。そういう相手がいて、自分の力を証明することで、自分の命に栄養を送っているマニピュレ-ターなんだから。しかも、子どもを手放さないことは、その母親を愚弄し、侮辱する道具でもある。同じように、私からもそうやって生気を吸い上げようとする。

 

 父親が子どもに手を上げることは、父親にとっては自分で自分の命綱を切ることであるから、するはずがないのだ。

 

 オリオルは言う。

 「でも言ったでしょ、お父さんがぼくに『お前の母親と俺の間の問題は、お前の母親と俺との間の問題だ。お前には関係ない。』って言ったとき、すごく怖くしたって。そのとき、手に持ってたスープのお玉から、熱いスープが後ろ向きにぴょんと飛んだんだよ。ああいうふうに、衝動に駆られて思わずぼくを殺すかもしれないって思うんだ。」

 確かに私も、しょっちゅうそういう身の危険を感じていた。あのマニピュレーターに自分の意見を言うと、意味もなく肉体的な危険を感じて、逃げ出したくなる。

 

 「お父さんが怖くしたら、一人で部屋に閉じこもらないで、カッサンドラといっしょの部屋にいなさい。2対1なら、お父さんに負けないよ。」

 「お父さんにやられそうになったら、カッサンドラの部屋に逃げるよ。でもその後、どうしたらいいの?カッサンドラの部屋のドアの前に、二人で家具を置いてバリケードを作るよ。でも、カッサンドラの窓からは、外に逃げられないよ。」

 

 そういえば、最近オリオルは私に、3階の窓から落ちたら死ぬ?2階だったら?としつこく何回も聞いた。

 脱走を考えているという話はしょっちゅうしてきたけど、本気だとは思っていなかった。明日会ったら、話さなくては。3階の窓から逃げようとしてはだめ。

 

 家出の計画や、向かいの交番に逃げ込む計画をオリオルはよく話すけど、それは空想好きなオリオルの現実逃避の一部だと思っていた。・・・現実逃避しなくてはならない状況と言うのは、良好とはいえないけど・・・誰にだって多少は、そういう現実逃避的な妄想をしたくなるときがあるものだ。

 

 どこまで本気に取っていいのか分からないけど、そんな発想が出てくること自体、問題があると、私は判断する。

 オリオルにも、精神科医の予約を入れた。