衣谷の日記

フランス在住働くシングルマザー

星の王子様、フランス公立中学国語の教材

 この9月から中学、6èmeに入ったうちの双子。国語(フランス語)の授業で最初に購入するように言われた本が、サンテクジュペリの「星の王子様」。

 フランスの学校には、日本の学校みたいな教科書がない。小学生のときは、ばらばらと先生が配るプリントや、教室においてある算数や国語の練習問題付きの学習参考書みたいなものを使っていた。

 日本だと、国語なら国語の教科書があって、それにすでに読むべき本の文章がちゃんと印刷されている。こちらでは、小学校の最後の二年間くらいは、フランス語の授業用に学校が本を貸し出したり、先生の本をまわし読みしたりしていた。先生にもよるが、買うように言われた本も、1年に1冊くらいあった。

 

 中学もほぼ同じシステムのようだが、一年で購入する本は、今のところカッサンドラのクラスで3冊だ。オリオルのほうはまだ連絡がない。(のか、オリオルがぼんやりしていて気づいていない。)

 

 最初の4ヶ月かけて読む本は、「星の王子様」。カッサンドラは、この本をすでに一年位前に読んでいる。私が昔から持っているのを、読書好きの彼女が勝手に読んだのだ。

 学校でやると知って、オリオルも時々カッサンドラの「星の王子様」を読んでいる。

 

 私は大人になってから、フランス語で読んだ。たぶん最初に読んだフランス語の文学作品だ。サンテクジュペリって、すばらしいと思う。「星の王子様」に出てくる言葉は、どれも私には真実を突いていると思う。きっと、この話のなかの「ぼく」のように、子どもの心を持ち続けた人なんだろう。

 

 元夫は、私が「星の王子様」を読んだり、内容に感心したりしても、まるで関心がなかった。むしろ、バカにした。私だったら、フランス人が日本のすばらしい児童文学、たとえば宮沢賢治とか、を、大好きで感心して読んでいたら、きっとすごくうれしく、誇らしく感じると思うのだけど、彼にはそういうことはなかった。

 もともと、文学嫌いだった。「小説なんて意味が分からない」と言っていた。がまんならないらしい。

 そもそもどうしてそこまで共感できない相手と結婚したのかなあ。やっぱり私は、何も分かってなかったなと思う。今、分かるようになったのかというと、それもあやしい。

 

 話がそれたけど、私は子どもたちが、「星の王子様」を読んでいるのを見るのが好きだ。そして、彼らは全く興奮して読んでいる。

 オリオルは、おもしろすぎる!聞いて聞いて、と声を出して、「酔っ払い」の章を私に読んだ。「こうなんだよ!全くこの通りなんだよ、大人は。」と大満足。

 カッサンドラも、「ビジネスマン」や「王様」の章を私に聞かせる。さんざん数えておいて、何を数えているのか聞かれて、「ほら、なんだ、あれだよ!」と自分の数えているものが何だったか忘れてしまうビジネスマン、なんとかして威厳を保とうとする悲しい王様。

 

 サンテクジュペリの国で育ち、まさに王子様くらい(?)の年齢の二人が、腹の底から共感できているんだから、やっぱり名作だなーと思う。

 私は異国文化のフィルターを通して見るからすばらしいと思っていたのかと、元夫の反応を見ていて思ったものだけど。よく元夫は、こういうのをちやほやする文化人がいやだとか言ってこき下ろし、そしてどこかに、「君みたいな部外者には分からないだろうけど」的な空気を漂わせていた。

 

 子供たちのほうが、文化を理解するようになったんさ、よかったよかった、と思う。

 学校では、どんなことを勉強するんだろう。授業の内容やノートを、カッサンドラに見せてもらおう。