衣谷の日記

フランス在住働くシングルマザー

運動嫌いだけど体力つけたい 40代に始めたこと

 30代の後半に、あまりに体力の劣化が激しかったために気功を始めたが、出産・引越しを機に通えなくなり、またしても何も運動しない生活に逆戻りした40代頭。

 そのころ、子どもたちが幼稚学校に通うようになり、送り迎えのときに校門前でママ友たちと会うようになった。そして、時々話しかけてきてくれていたドイツ人ママのエルガが、私を熱烈にバー・オー・ソルに誘うようになった。

 エルガには娘が二人いて、二人ともうちの二人より年上だが、二人がカッサンドラが始めたダンスと同じクラブでずっとダンスをやっていた。ダンスクラブでも校門でも会っているうち、外国人ママという共通点も手伝って、言葉を交わすようになったのだった。

 

 エルガが育ちのよい文化的な人であることは、見ればわかった。美術ガイドの仕事をしている。彼女は、ダンスやクラシック音楽の熱烈なファンでもある。

 カッサンドラの入っているダンスクラブは、私は最初知らなかったが、この地域では定評と実力のあるクラブだ。当時3歳半のカッサンドラは、チュチュに憧れていただけのようなおちびさんだったけど、すでに何年かそこへ娘たちを入れているエルガには、そのことは分かったいたと思う。

 そして、そのクラブのバー・オー・ソルを「すごくいいのよ。絶対やるべき!」と強く勧めてくれた。

 最初私は、「私本当に体力ないから、できるかどうか不安」と言っていたのだけど、彼女は、「そんなの大丈夫。誰もちゃんとできないわ。できるだけやればいいのよ。ペネロップはとても優しいし。」と言っていた。

 

 たぶん、当時の私は、双子子育てですっかり社会から遠のき、友だちづきあいもほとんどなくなっていたから、エルガの誘いがうれしくて、それがよいモチベーションになったと思う。しかもダンスではなく床でやるバーならばできるかもしれない。

 パリに住んでいたころ、バー・オー・ソルをバスチーユのダンススクールでやっていたことがある。プロやセミプロのダンサーも通うスクールで、できないくせにレッスン内容の質にこだわった私は、そこのチケットを買っていた。だから、バー・オー・ソル自体はよく知っていた。

 実を言うと、私が唯一好きなスポーツ(それをスポーツと呼んでよければ)は、ダンスだ。バレエでも、それ以外でも、ダンスだけは体が疼くようにやりたくなる。とはいえ、ちゃんと習ったことはなく、大人になってからダンススタジオのチケットを買って、少しだけレッスンを受けたことがある程度だ。

 

 バスチーユのダンススクールのバー・オー・ソルの先生は、50代くらいの太ったおじさんで、厳しく、自分はやらずに、片手に持った棒で床をごんごんやりながら、立って鏡の前を行ったり来たりしながら、「最初はファーストポジション、足は伸ばして、つま先はポワント!外旋キープしてバットマン!」と怒鳴るだけ。周りのダンサーたちは、その前後にもレッスンがあるようだったし、いろいろなところからきた人が混じっていて、ライバル意識でぴりぴりした感じもあった。

 私は周りの見よう見まねでやっていたが、一つの動きの半分くらいで力尽きて動けなくなるという感じだった。レッスンの後は数日激しい筋肉痛が続くという状態で、最近知ったことだが、このような怪我に近いくらいの筋肉痛が出るような運動は、強度が強すぎて筋力アップには効果がないらしい。

 そんなことは知らなかったので、たまに気が向いたらチケットを持ってレッスンを受けたけど、継続的な習慣とはならなかったし、体力維持にも全く貢献しなかったものと思われる。

 

 カッサンドラとエルガのおかげで、私は44歳でバー・オー・ソルのレッスンをとるために同じダンスクラブに入会した。

 ペネロップのバー・オー・ソルは、バスチーユのおっさんのレッスンとは全く違っていた。内容は同じなのだけど、若いペネロップは、自分といつもいっしょにやった。そして、かわいらしい声で生徒を励まし続ける。できなくても、元気な中年女性の多いレッスン中は、笑いが耐えない。

 

 最初週一回だったレッスンを、私は半年後には二回にした。

 私は柔軟性だけは昔からあって、バー・オー・ソルを再開したときも体だけは柔らかかった。ただ筋力がものすごく落ちていて、特に腹筋がひどいように感じた。

 双子妊娠で重度の腹直筋乖離になり、産後に特別キネジレラピストのリハビリが2ヶ月くらいあったのだけど、それでも完全には回復しなかった。仰向けに寝転がった状態から、せーのと勢いをつけても、手を使わずに起き上がることが出来ないほど、腹筋がなかった。

 腹筋だけでなく、肩や背中や足や首、ありとあらゆる箇所の筋肉が落ちていたことは確かだけど。

 その状態から、10ヵ月後には、私は手を使わずに起きられるようになっていた。これは本当にバー・オー・ソルのおかげだ。

 

 私は、バー・オー・ソルの仲間のなかでも、特に熱心な生徒になって、それ以来もう6~7年続けている。

 

 バー・オー・ソルで体力が少し回復してくると同時に、バー・オー・ソルではあまり補えない心肺機能やバランス感覚のようなものが気になり始めた。

 たとえば、プールに行くとすぐに息が上がってしまう。電車に乗り遅れないように久しぶりに全力疾走したら数十秒走っただけで限界が来たり、自転車に乗りにくく感じたり、といったこと。

 そのころやはり別のママ友から、心肺機能を高めるためのアクアビシクレットをやらないかと言われたりしたことも、私がそれを気にし始めるきっかけになった。

 とはいえ、走る、とか、泳ぐ、とか、自転車をこぐ、とかいう運動が、私はあまり好きではない。絶対に続かないのが目に見えている。今だったらもしかするとできるかも、と思うけど、当時はまだまだ体力がなさ過ぎた。

 

 それでまた、モチベーションの上がる運動をなにか追加したいと思うようになって行った。